万年筆のインクが出ない原因と直し方|新品・久しぶりと洗い方

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麻のテーブルクロスの上に置いた紺色の万年筆と白紙の便箋、水の入った小さなグラスと白い布

万年筆にカートリッジを差したのに、紙の上でペン先が空回りするだけ。久しぶりに引き出しから出したら、まったく書けない。そんなとき、壊れたのかと焦りますよね。

万年筆のインクが出ない、かすれるという悩みは、新品で最初の1本を使い始めたときにも、久しぶりに使うときにも起こります。調べると、洗う、お湯につける、振る、カートリッジを回すなど、いろいろな対処法が出てきて、どれを信じていいか迷うかもしれません。パイロットやプラチナといったメーカーごとに手入れの方法が違うのも、混乱しやすいところです。

結論から言うと、万年筆のインクが出ないときは、たいていペン先の中でインクが乾いて固まっているだけです。水かぬるま湯に浸けて洗えば直ることがほとんどで、分解や熱湯、アルコールは要りません。むしろメーカーや国内の取扱元がはっきり止めている扱い方です。ただし新品でカートリッジを差したばかりなら、洗う前に、少し待つことと、まっすぐ奥まで差せているかを確かめるのが先になります。

この記事では、パイロット・セーラー・プラチナなどメーカー公式の説明をもとに、状況ごとの原因の見分け方から、洗浄の手順、やってはいけないこと、日頃の手入れやメンテナンスの頻度までをまとめました。

  • 新品・久しぶり・途中からで違うインクが出ない原因
  • カートリッジ式とコンバーター式の洗い方の手順
  • メーカー別の水温とつけ置き時間の違い
  • 熱湯・アルコール・分解など避けたい扱い方
目次

万年筆のインクが出ない原因は乾いて固まったインク

万年筆のインクが出ない原因でいちばん多いのは、ペン先やペン芯の中でインクが乾いて固まり、通り道をふさいでしまうことです。ただ、いつ出なくなったのかによって、先に確かめることが変わります。ここでは状況ごとに原因を切り分け、最後に、よく見かけるけれど逆効果になりやすい対処法も整理します。

新品・久しぶり・途中からで原因を見分ける

インクが出ないと気づいたら、まず「どんな場面で出なくなったか」を思い出してみてください。原因の見当がつくだけで、やることがぐっと絞れます。

セーラー万年筆は公式のお手入れ方法の中で、万年筆が書けなくなる理由で最も多いのは、インクがペン芯の内部で固まって流れにくくなることだと説明しています(出典:セーラー万年筆『万年筆のお手入れ方法』)。パイロットも、よくある質問の中で、インキの出が悪くなるのは乾燥で固まったインキ成分や異物でペン先や内部(ペン芯)が詰まっていることが多くの原因だ、と答えています。2社が同じ原因を挙げているので、まず疑うべきはここです。

そのうえで、場面ごとに見当をつけると次のようになります。

出なくなった場面考えられる主な原因最初にやること
新品・カートリッジを差したばかりインクがまだペン先まで下りていない/差し方が浅い・斜め少し待つ→差し方を確かめる
久しぶりに使うペン芯の中で前のインクが乾いて固まったカートリッジを抜いて水かぬるま湯で洗う
使っている途中からかすれるインク切れ/紙の繊維の詰まり/持ち方残量→持ち方→洗浄の順に見る
キャップを開けたまま置いていたペン先でインクが乾いた布やティッシュを当ててインクをにじませる

新品のときは、インクの通り道がまだ空っぽなので、詰まりよりも「インクが届いていない」ことを先に疑います。久しぶりのときは、前回のインクが中に残ったまま乾いているので、洗うのが近道です。途中からのときは、単純にインクが残っていないだけ、ということもあります。

迷ったら、インクの残量を見る→差し方を見る→洗うの順で試すと、無駄な手間がかかりません。いきなり分解したり、強く振ったりする必要はありません。

次の3つの見出しで、場面ごとの対処を順に説明していきます。自分に当てはまるところから読んでもらえれば大丈夫です。

学生寮の机で紺色の万年筆のペン先を見つめる眼鏡の女性を肩越しに見たところ

新品や最初のカートリッジでインクが出ないとき

買ったばかりの万年筆に初めてカートリッジを差して、すぐに書こうとしたらインクが出ない。これは故障ではなく、インクがペン先に届くまでに少し時間がかかっているだけ、ということがよくあります。

セーラーの公式の説明では、カートリッジを差して胴をはめ直すと、しばらくしてインクがペン芯から吸い上げられ、書ける状態になる、という流れになっています。カートリッジの中のインクが、ペン芯の細い溝を伝ってペン先まで下りてくるには、少し待つ必要があるわけです。差した直後に書けなくても、少し置いてから試してみてください。

待っても出ないときは、差し方を見直します。メーカーの説明では、次の点が共通しています。

  • ペン先を上に向けた状態で差し込む(パイロット・セーラー)
  • カートリッジはまっすぐ奥まで差し込む(セーラーは「グッと」と表現)
  • 回しながら差し込まない
  • 向きを逆にしない

特に気をつけたいのが、回しながら差すことです。パイロットは、カートリッジを回しながら差し込むと蓋が塞がってインキが出なくなる可能性がある、と注意しています。また、逆向きに差すと、インクの蓋を破るための内部の部品が破損するおそれがあるそうです。カートリッジの差し込みが浅い・斜めになっている、というのも、新品で出ないときのよくある原因の1つと考えてよさそうです。

それでも出ない場合、パイロットは、カートリッジを両側から軽く押してペン先にインクを送り出すと書けるようになる、と案内しています。一方でセーラーは、差し込むときにひねったり強くつまんだりするとカートリッジやペン芯が破損するおそれがある、としています。つまむかどうかはメーカーで扱いが分かれるので、手元のペンの説明書に従ってください。

カートリッジはメーカーごとに規格が違います。セーラーは自社の万年筆には自社のカートリッジを使うよう案内しています。合わないカートリッジを無理に差すと、インクが出ないだけでなく破損の原因になります。

ペン先を上に向けた万年筆の首に、インクカートリッジをまっすぐ差し込む手元

久しぶりに使う万年筆はペン芯が乾燥している

しばらく使っていなかった万年筆にインクが出ないのは、いちばん典型的なパターンです。前に入れていたインクが、ペン芯の中で乾いて固まっています。

プラチナ万年筆は公式の手入れの案内で、しばらく使っていなかった万年筆を久しぶりに使うときは、ペン芯とペン先がからからに乾いている、と書いています。そのうえで、カートリッジを抜いて、ペン先の部分をぬるま湯に浸けるよう案内しています。セーラーも、長い間使っておらず新しいインクを入れたのに書けないときは、最後に使ったときのインクがペン芯内部で固まり、新しいインクの流れを邪魔している可能性がある、と説明しています。

つまり、新しいカートリッジに替えるだけでは直らないことが多い、ということです。古いインクのかたまりが通り道をふさいだままなので、新しいインクが下りてこられません。先に中を洗って、固まったインクを溶かし出す必要があります。

洗い方は、次の中見出し(H2)でくわしく説明しますが、要点だけ先に書いておきます。

  • カートリッジ(またはコンバーター)を外す
  • ペン先を首の部分ごと、コップの水かぬるま湯に浸ける
  • 久しぶりの場合は一晩くらいつけ置きする
  • 流水ですすぎ、布で水気を拭いて乾かす
  • 新しいカートリッジを差す

パイロットも、しばらく使っていなかったときは、寝る前に水やぬるま湯に一晩入れておくとより効果的だ、と案内しています。固まり具合によっては一度で溶けきらないこともあるので、水の色が出なくなるまで水を替えながら繰り返すのがコツです。

長く使わない予定があるときは、インクを抜いて中を洗ってからしまうのがメーカーのすすめる保管方法です(パイロット)。次に使うときに、この久しぶりのトラブルをそもそも防げます。

書斎の古い木の引き出しの奥にしまわれていた紺色の万年筆と無地の封筒

途中からかすれるのは紙の繊維・インク切れ・持ち方

普段から使っていて、ある日から急に線がかすれるようになった。このパターンでは、原因がいくつかに分かれます。順に確かめていきましょう。

まずはインク切れを疑う

いちばん単純なのはインク切れです。胴を外してカートリッジやコンバーターの中を見て、インクが残っていなければ交換・補充するだけで直ります。カートリッジは中が見えにくいものもあるので、光にかざして確かめるとわかりやすいです。

紙の繊維や固まりかけたインク

インクが残っているのにかすれるなら、通り道の詰まりを疑います。セーラーは、使い続けていてインクの出が悪くなったときは、紙粉が詰まったり、インクがペン芯内部で固まって流れにくくなったりしている可能性がある、と説明しています。毎日使っていても、ペン先には少しずつ紙の繊維や汚れがたまっていくものです。パイロットも、知らないうちにペン先や内部には汚れが付くので、柔らかい布で拭き取ったり、ときどき洗ったりするようすすめています。

持ち方でペン先が浮いている

意外と多いのが持ち方の問題です。パイロットは、書き始めの文字が欠けてしまう原因として、無意識にペンをひねって持ち、片側のペン先が浮いた状態になって紙にインクを伝えられないことを挙げています。そのため、ペン先をなるべく正面に向けたまま書くよう案内しています。

また、かすれたからといって強く押しつけるのは避けたいところです。パイロットは、万年筆は筆圧をほとんどかけなくてもインクがしみ出して書けるので、ボールペンのような強い筆圧は必要ないとしています。あまり強い筆圧は、ペン先の切り割りを広げてしまう可能性があるそうです。

持ち方や角度について、もう少しくわしく知りたい人は万年筆の使い方|インクの入れ方と書き方は2つだけ守ればいいで、刻印の向きと寝かせ方をまとめています。

図書館の机で紺色の万年筆を軽く寝かせて持ち、力を抜いて書く女子学生の横顔

振る・回す・強く押すは逆効果になりやすい

インクが出ないとき、とっさにやってしまいがちな対処がいくつかあります。ネットでもよく見かけますが、メーカーの説明と照らし合わせると、逆効果になりやすいものが混じっています。

強く振る

体温計のように振ってインクを下ろそうとするのは、避けたほうがよさそうです。プラチナは、インクの出方が悪くなったときは力強くペンを振らないでほしい、それよりもぬるま湯に浸ける(同社の表現では「お風呂に入れる」)ことだ、と案内しています。振っている途中で手から滑らせて落とせば、それこそ故障の原因になります(パイロットも、落とすと故障の原因になると注意しています)。

カートリッジを回す

出ないときにカートリッジを回してみる、という方法も見かけます。ただ、パイロットは、カートリッジを回しながら差し込むと蓋が塞がってインキが出なくなる可能性があると注意しています。差し直すなら、一度まっすぐ抜いて、まっすぐ差し込むほうが安全です。なお、張り付いて抜けないときについては、パイロットは少し右回り(時計回り)に回しながら引き抜くよう案内しています。これは抜くときの話なので、区別しておきましょう。

強く押しつけて書く

前の見出しでも触れたとおり、強い筆圧はペン先の切り割りを広げる可能性があります。かすれたまま力を入れて書き続けると、インクが出ないうえにペン先まで傷めてしまうかもしれません。

出ないときにやりがちな「振る」「回す」「押しつける」は、どれもインクが固まっているという根本の原因を解決しません。迷ったら、次に説明する水かぬるま湯で洗うほうが、ペンにやさしく確実です。

万年筆がどうやってインクを紙に送っているのか、ペン芯の役割まで知っておくと、なぜ洗えば直るのかも納得しやすくなります。仕組みは万年筆とは何か?仕組みとボールペンとの違い・値段を徹底解説で図解しています。

万年筆のインクが出ないときは水かぬるま湯で洗う

インクの固まりが原因なら、万年筆のインクが出ないときの対処は「水かぬるま湯で洗う」が基本です。パイロットも、お手入れの基本は水洗いだと案内しています。ここでは、カートリッジ式とコンバーター式それぞれの手順、メーカーごとの水温と時間の違い、やってはいけないこと、洗ったのに出ないときの対処まで順に見ていきます。

カートリッジ式の洗い方は首ごとつけ置き

カートリッジ式の万年筆は、ペン先がついた首の部分ごとコップに浸けて洗います。特別な道具は要りません。用意するものは、コップ、水かぬるま湯、柔らかい布かティッシュの3つだけです。

手順

  1. キャップと胴を外す
  2. カートリッジをまっすぐ引き抜く
  3. ペン先を首ごと、水かぬるま湯を入れたコップに入れる
  4. そのまましばらく置く(汚れの程度で時間を変える)
  5. 取り出して、首軸からペン先に向けて流水で洗い流す
  6. 柔らかい布で水気をよく拭き取り、乾かす

これはパイロットの公式の手順をもとにした流れです(出典:パイロット『PILOT LIBRARY 万年筆の使い方』)。パイロットによると、コップに入れておくのは1〜2時間ですが、しばらく使っていなかったときは一晩入れておくとより効果的です。ペン先を入れた直後は、水がインクで濃く染まることがあるので、何回か水を替えてきれいな状態で浸けておくとよいそうです。

セーラーも手順はほぼ同じで、首(同社の呼び方では「大先」)全体を水に浸したままひと晩置き、水道水で洗い流し、柔らかい布でよく拭き取る、という流れです。布やティッシュに色の濃いインクが付かなくなったら洗浄完了、という目安も示しています。

流水ですすぐときは、首軸の側からペン先に向けて水を通すのがポイントです。パイロットのお手入れの説明図でも、首からペン先に向けて何度か水を通してきれいに洗う、と書かれています。すすいだあとは、柔らかい布で水気をよく拭き取ってから乾かしてください。

洗ったあとは、新しいカートリッジを差しましょう。プラチナも、洗い終わったら新しいカートリッジを使うよう案内しています。使いかけのカートリッジを戻すと、中で濃くなったインクや汚れをまた送り込むことになりかねません。

注意したいのは、浸けてよいのはペン先のついた首の部分だけという点です。胴(軸)ごと水に沈める必要はありません。また、軸の素材や構造によっては浸け洗い自体を避けたほうがいいものもあります。それは後の「熱湯・アルコール・分解」の見出しでまとめます。

キッチンの窓辺で水を入れたコップに万年筆の首を浸け、青いインクが溶け出しているところ

コンバーターの洗浄は水を吸って出すだけ

ボトルインクを吸い上げるコンバーターを使っている場合は、コンバーターを付けたまま洗えます。インクを吸うのと同じ動きで、水を吸っては出す、を繰り返すだけです。

手順

  1. キャップと胴を外す(コンバーターは付けたまま)
  2. 水かぬるま湯を入れたコップに、ペン先を浸す
  3. インクを吸入する要領でコンバーターのノブを回し、水を吸う
  4. ノブを反対に回して水を出す
  5. 水の色が出なくなるまで、水を替えながら繰り返す
  6. 柔らかい布で水気を拭き取り、乾かす

パイロットは、インキを吸入するように水を繰り返し出し入れすれば簡単に洗浄できる、としています。汚れがひどい場合は、カートリッジ式と同じようにペン先をコップにつけておくと、より効果的だそうです。セーラーは、吸入と排出を5〜6回繰り返したあと、コンバーターを外し、水を入れ替えたコップに首全体をひと晩浸けておく、という手順を示しています。

万年筆のコンバーター自体を洗いたいときも、この「水を吸って出す」を繰り返せば、中に残ったインクもいっしょに流れていきます。インクの色を替えるときも同じ手順でかまいません。

パイロットは、コンバーターの付け外しを頻繁に行うと、接続口が緩んでくる場合があると注意しています。洗うたびに外す必要はないので、ふだんは付けたまま水を出し入れするだけで十分です。

吸入式(本体に直接インクをためるタイプ)

カートリッジもコンバーターも使わず、軸に直接インクをためる吸入式の万年筆もあります。セーラーの「レアロ」の場合は、尾栓を回して水を吸い込み、反対に回して出す、を繰り返して洗います。軸全体を水に浸けると尾栓のすき間から軸内に水が入るので、浸けないよう案内されています。吸入式は機種ごとの差が大きいので、手元の説明書の手順を優先してください。

洗面台で水を張ったガラスの器にペン先を入れ、コンバーターのノブを回して水を出し入れする手元

お湯は何度まで?パイロットやプラチナの手順

水がいいのか、お湯がいいのか。どれくらい浸けておけばいいのか。メーカーの説明を並べてみると、実は少しずつ違います。主な4社の公式の案内を表にまとめました。

メーカー水温つけ置きの時間手入れの頻度の目安
パイロット水か40℃前後のぬるま湯1〜2時間(しばらく使っていなかったときは一晩)頻繁に使うのが最良の手入れ。ときどき洗う
セーラー水ひと晩よく使っていても2〜3か月に1度
プラチナぬるま湯一昼夜月に1度
LAMY(三菱鉛筆)水、またはぬるま湯数時間〜一晩(カートリッジ式)ときどき(色替え・長期保管の前も)

温度をはっきり数字で示しているのはパイロットで、「水か40℃前後のぬるま湯」としています。プラチナはぬるま湯、セーラーは水です。どのメーカーも、水か、せいぜいぬるま湯までという点は共通しています。私の考えとしては、迷ったら人肌くらいのぬるま湯か、ただの水道水で十分かなと思います。どちらでも固まったインクは溶けてきます。

時間は、軽い詰まりなら1〜2時間、久しぶりで固まっているなら一晩、と考えておけば大きく外れません。プラチナは「一昼夜」とかなり長めです。急いでいるときは短めに浸けて試し書きし、まだ出なければもう少し浸ける、というやり方でもかまいません。

専用の洗浄キットもある

水洗いで落ちない汚れには、メーカーの洗浄キットという選択肢もあります。プラチナの「万年筆専用インククリーナーキット」は、洗浄液と洗浄用スポイトのセットで、洗浄液を水かぬるま湯で10倍に薄めて一昼夜浸け置きする、という使い方です(染料インクで汚れが軽ければ2〜3時間とされています)。ただしスポイトはプラチナ製品専用なので、他社の万年筆に使うときは注意が必要です。セーラーにも、手早く洗える「万年筆サポートキット」があります。

水洗いを何度か試しても色が抜けきらないときの次の一手として、手元に置いておくと安心です。

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なお、ここで挙げた水温や時間はあくまでメーカーの案内に基づく一般的な目安です。機種によって異なることがあるので、正確な情報は各メーカーの公式サイトや説明書を確認してください。

熱湯・アルコール・分解はメンテナンスでも禁物

早くきれいにしたくて、熱いお湯をかけたり、アルコールで拭いたり、ペン先を外して洗ったりしたくなるかもしれません。でもこれらは、メーカーが避けるよう案内している扱い方です。

熱湯で洗う

LAMYの万年筆を扱う三菱鉛筆は、熱湯での洗浄はしないよう、はっきり注意しています(出典:三菱鉛筆『Lamy(ラミー)社の万年筆の取り扱い方法・お手入れ方法』)。理由は、軸の劣化や変形を引き起こす場合があるからです。国内メーカーの案内も、先ほどの表のとおり水か40℃前後のぬるま湯まで。今回調べた4社の案内の範囲では、熱湯を使ってよいとしているところは見当たりません。温度を上げても早く直るわけではないので、ぬるま湯までにとどめましょう。

アルコール・薬品・洗剤

パイロットは、劣化するおそれがあるので万年筆の表面をアルコールで拭かないよう案内しています。セーラーも、アルコールを含んだウエットティッシュや布、薬剤は使わないよう注意しており、樹脂がもろくなって割れるおそれがあるそうです。三菱鉛筆も、薬品や洗剤類はいっさい使わないよう書いています。プラチナは、拭くときは柔らかい乾いた布で空拭きし、濡れた布や金属磨き、薬品などは絶対に使わないよう案内しています。

分解する

パイロットは、洗浄するときにペン先とペン芯を絶対に首から抜かないよう注意しています。プラチナは、ペン先とペン芯は精巧にできていると説明していて、ひどい汚れで水洗いでも落ちないときはメーカーで分解掃除をする必要がある、としています。分解はメーカーに任せる作業と考えてください。

浸け洗いを避けたい万年筆

  • パイロット「キャップレス」:本体内部が複雑な構造なので、水に浸さない(パイロット)
  • 透明軸・スケルトン軸:首の中に水が入って色素が残ることがあるので、浸け洗いは避けてペン先部分だけ洗い流す(セーラー)
  • ブライヤーなどの木軸:水に浸けると膨張し、割れる(クラック)おそれがある(セーラー)

パイロットは、透明の首軸を水に浸けると内部のすき間に残った水分が見える場合があるものの、性能には問題ない、とも補足しています。気になるときは、メーカーに相談しましょう。

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洗ったのにインクが出ない・薄いときの対処

ちゃんと洗ったのに、インクが出ない。あるいは、出てくるけれど妙に薄い。これも、よくある疑問です。多くの場合、故障ではありません。

洗った直後に薄いのは水が残っているから

洗った直後の万年筆は、ペン芯の中にまだ水が残っています。その状態で新しいインクを入れると、最初のうちはインクが水で薄まって出てきます。何度か試し書きをしているうちに、本来の濃さに戻っていくはずです。パイロットや三菱鉛筆が、洗ったあとは水分を拭き取ってよく乾かすよう案内しているのも、このためと考えられます。急がないなら、洗ったあとは乾いた布で水気を取り、しばらく乾かしてからインクを入れると、薄まりを抑えられます。

インクがまだ下りてきていない

新しいカートリッジを差した直後は、新品のときと同じで、インクがペン先に届くまで少し時間がかかります。少し待ってから書いてみてください。パイロットの製品なら、カートリッジを両側から軽く押してインクを送り出す方法も案内されています。

ペン先が乾いている・呼び水

キャップを開けたまま放置してインクが乾いたときについて、パイロットは、ペン先に布やティッシュを当てて、ペン先からインクをにじませるようにする方法を紹介しています。

それでも出ないときは、洗い残しかペン芯のトラブル

何度か書いても出ないなら、固まったインクがまだ残っているかもしれません。もう一度、水を替えながら長めにつけ置きしてみましょう。それでも出ない場合について、セーラーは、水洗いしてもインクが出ないときはペン芯などに何らかのトラブルが発生している可能性がある、としています。ここから先は、無理に自分で何とかしようとせず、次の見出しで説明するメーカーへの相談に切り替えてください。

洗ったあとの確認は、水気を拭いて乾かす→新しいインクを入れる→少し待つ→何度か試し書きの順です。一度で濃く出なくても、慌てなくて大丈夫です。

まとめ:万年筆のインクが出ない時の手入れと修理

万年筆のインクが出ないときは、ほとんどの場合、ペン先の中で乾いて固まったインクが原因です。新品なら少し待つことと、カートリッジをまっすぐ奥まで差したかの確認を先に。久しぶりのときや途中からかすれるときは、水かぬるま湯で洗えば直ることがほとんどです。

  • 新品で出ない:少し待つ→まっすぐ奥まで差したか確認(回しながら差さない)
  • 久しぶりで出ない:カートリッジを抜いて首ごと水かぬるま湯に一晩
  • 途中からかすれる:インク残量→持ち方→洗浄の順に確認
  • 避けること:熱湯・アルコールや薬品・自分での分解・強く振る

手入れの頻度で予防する

パイロットもセーラーも、毎日少しでも書くことがいちばんのメンテナンスだとしています。インクが中を流れ続けていれば、固まる暇がないからです。定期的に洗う頻度は、セーラーが2〜3か月に1度、プラチナが月に1度を目安にしています。そのほか、インクの色を替えるときと、しばらく使わずにしまうときも洗うよう、各社が案内しています。使わないときはキャップをしっかり閉めておくことも、乾燥を防ぐ基本です。パイロットは、キャップを閉めておくことはインクの乾燥を防ぐだけでなく、万一落としたときにペン先を守ることにもなる、と説明しています。インクについても、パイロットは他のインクを混ぜたり古いインクを使ったりすると故障の原因になるとしているので、長く置いたインクは新しいものに替えると安心です。

直らないときはメーカーへ

水洗いを何度か試しても直らない場合は、ペン芯の不具合など、自分では対処できないトラブルの可能性があります。パイロットは筆記具修理の問い合わせフォームやお客様相談室、セーラーは購入した販売店かユーザーサービス、プラチナはメーカーでの分解掃除を案内しています。修理の受付方法や費用は変わることがあるので、正確な情報は各メーカーの公式サイトで確認してください。自分で分解するより、メーカーや購入店に相談するほうが、結果的に大切な1本を長く使えるかなと思います。

修理に出すか迷うくらいなら、普段使いの1本を新しく用意して、今の万年筆はじっくり直す、という分け方もありかなと思います。

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